一般社団法人『新聞力研究所』 設立の辞(メッセージ)
理事・監事を代表して 菅沼堅吾

「〇〇力」なるものが、世の中にあふれている。それならば『新聞力』を忘れてはいないかと、一般社団法人「新聞力研究所」を設立した。今やSNS時代、AI時代と叫ばれ、新聞は時に「オールドメディア」「オワコン」などと揶揄されている。確かに老舗ではあるが、終わったコンテンツではない。むしろ今の時代、不可欠なコンテンツ「フカコン」だと思っているからだ。
法人の目的には「新聞の持つ力、可能性を議論、研究、実践することなどにより新聞が未来永劫、信頼できる不可欠なメディアとして輝き続けることに貢献し、民主主義の発展、平和で幸福な社会の実現に寄与すること」と明記した。
新聞記者として新聞の世界に足を踏み入れてからほぼ半世紀がたった。編集局長という新聞づくりの責任者になり、最後は北陸中日新聞と東京新聞という二つの新聞銘柄の代表、私流に言えば「ブランドマネージャー」を務めた。楽観論と言われるかも知れないが、新聞が自分たちの使命、仕事に忠実である限り、読者は必ず応援してくれると確信している。読者と言うより「ファン」、今時で言うと「推し活」になるからだ。
新聞力研究所、通称シンブンケンは、一言で言えばそんな新聞の熱烈な応援団だ。法人の目的を達成するために数多くの事業を計画しているが、象徴的なものは「新聞力」を感じる記事などを表彰する「新聞力大賞」を作ることだ。
理事らの推薦と自薦による新聞力の記事などの積み重ねにより、「新聞やるじゃない!」と多くの人に思ってもらうと同時に、新聞力を研究する機会としたい。東京新聞編集局新聞開発室のデザイナーによるシンブンケンのロゴマークには開いた紙面の上に「!マーク」が付いているが、新聞力を表している。
「新聞力」とは何かを考えるとき、新聞が「人が幸せになる」ために存在する「幸福産業」であることを強調しておきたい。
私が岡崎支局(愛知県)で新聞記者として最初に書いたのは、保育園か幼稚園の園児が河川敷の斜面で段ボールをソリ代わりにして遊んでいる様子を写真付きで紹介した記事だ。地域版に小さく載ったが、読者からは「家族の記念になった」「お祝いしたいから写真を分けて」という感謝の電話が何本もあった。
当時は意識していなかったが、「人が幸せになる記事」は、記者になった日から書けるのだ。困っている人や弱い人を支援するための記事も「人が幸せになる記事」に当たる。その「定義」はあまたあるが、その究極は人々のために国家権力を監視し、国に2度と戦争をさせないための記事だ。平和な世の中であることが、「人が幸せになる」ために不可欠だからだ。
新聞を毎日読んでいると自然に身につく力があることも「設立の辞」に記しておきたい。シンブンケンには新聞の「効能」を世の中に広める「伝道者」の使命もあるからだ。読解力、文章力、語彙力、思考力、論理力、共感力、情報力、批判力、雑談力、コミュニケーション能力…。まさに新聞によって変革期を生き抜く力、人間力を磨くことができる。
世の中に完璧なものなどなく、新聞も批判されて当然のことは多々あるが、多くの人たちが力を合わせて新聞を作り、読者のもとに日々届けている。
「新聞の逆襲」をシンブンケンとして始めたい。
