SHINBUNKEN

【新聞の逆襲】

「オワコン」ではなく「フカコン」だ・・・新聞力研究所・菅沼堅吾代表理事が仕掛ける「新聞の逆襲」(1)

「新聞情報」 令和8年5月27日号
掲載記事

一般社団法人新聞力研究所(通称・シンブンケン)が4月15 日に設立された。代表理事は『東京新聞はなぜ、空気を読まないのか』の著者で、中日新聞東京本社代表を務めた菅沼堅吾氏。キャッチコピーは「新聞の逆襲」。
SNSが全盛を極める時代、新聞や地上波といった既存媒体はオールドメディア、「オワコン」と揶揄されている。新聞の総発行部数は減少傾向にあるが、それでもなお毎朝、およそ2500万部(日本新聞協会調べ)の新聞が日本全国に届けられている。現場取材にはじまり、原稿の修正、ファクトチェック、編集方針との整合性確認といくつもの工程を経て作られる新聞。そうした組織ジャーナリズムをSNS時代にどう進化させていくのか。他方、情報の大洪水の中にあって、新聞が果たす「岩場」としての役割とは何か。
菅沼代表理事に、シンブンケン設立への思いと構想を聞いた。(聞き手 内堀輝彦/構成・撮影 岡田達也)

設立動機 202万インプレッションが示した「フカコン」の証明

―なぜ今、新聞力研究所を立ち上げたのでしょうか。問題意識と設立の原点をお聞かせください。

菅沼氏
東京新聞の代表を退いてここ2年弱、私は顧問という立場で経営のど真ん中から離れ、「新聞の外側の世界」を徹底的に体験する時間を得ました。本の出版をきっかけに、ユーチューブやラジオ、SNSなどあらゆるメディアに出演したり発信する中で、社会が新聞をどう見ているのか、その現実を痛感しました。
この2年間で「絶望とは言わないが、本当に厳しいな」という感覚と、同時に「まだまだ希望はあるな」という両方を体験したんです。
厳しさを感じたのは、ユーチューブやSNSで発信すると批判が本当に多いことです。私が「新聞の使命は権力の監視だ」と語れば、「お前に権力の監視なんか頼んでいない」、「新聞なんてもう終わりだ」といった反発が即座に飛んでくる。
しかし一方で、強い希望も感じました。私は現在「東京新聞の菅沼さん」というアカウントでX(旧ツイッター)をやっていますが、「新聞の使命は権力の監視だ」とつぶやいた投稿が202万インプレッションを記録したんです。これは中日新聞の部数に匹敵する数字です。また最近では、ナフサ不足で苦しむ現場の記事を紹介し、「政権は現場の声を聞け」と発信した投稿が97 万インプレッションに達しました。
膨大な批判も浴びますが、その裏で「新聞に頑張ってもらいたい」、「現場の現実をもっと伝えて、国を動かしてほしい」という期待の声が根強くある。無関心こそメディアにとって最も恐ろしいが、関心があるからこそ批判も生まれる。この数字を体感して、新聞はまだまだ必要とされていると確信しました。
そこで私は「オワコン(終わったコンテンツ)」に対して「フカコン」という言葉を使うようになりました。どこで話しても私の造語なのでみんな首をかしげますが、「不可欠なコンテンツの意味です」と説明すると、多くの人がうなずいてくれる。
さらに現役を離れて痛感したのは、社会が「新しい戦前」から「新しい戦中」へと急速に動き始めている危機感です。私の本は3・11 と安保法制を中心に書いたものですが、安倍政権から「新しい戦前」が始まったと思います。
昭和30 年生まれで平和な時代を生きてきた者として、黙ってはいられない。幸い今はSNSという発信装置もある。だからこそ、新聞の力をもう一度社会に示す自分なりの拠点が必要だと考え、シンブンケンを設立しました。

続く

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